1920年代ピスカトーアによる演出を嚆矢として、60年代にホーホフート、キップハルト、P・ワイスらの問。題作が相次いで上演されることで脚光を浴びたドキュドラマは、現在本家ドイツよりもアメリカ合衆国で盛んに上演されている。そればかりか、今回取り上げるロス暴動を扱ったAnna Deavere Smith の Twilight: Los Angeles 1992 や、燐光群が上演して日本でも話題になった Moises Kaufman の Laramie Project などはテレビ映画版が作られて放映されたし、やや毛色は違うものの、同時多発テロを扱った Anne NelsonのThe Guys などはハリウッド映画にもなった。これらはいわばドキュメンタリー映画の演劇ヴァージョンとして、すなわち紛れもない真実がそこに表象されているものとして、観客は受容しているのだろうか? それとも、よいドキュメンタリー映画がそうであるごとく、自らが語っているのは真実ではないかもしれない、という疑いをそこに提出しているのだろうか? 本発表では、Twilight: Los Angeles 1992の大半と、Laramie ProjectおよびThe Guysの一部をヴィデオで鑑賞したのち、発表者の考えを述べたい。